2019/05/06

4 留置場のアクリル板

逮捕後4日。

逮捕から72時間すぎても何の音沙汰もなかった。
勾留されたと思い、警察署に電話をかけた。
留置係の警察官に彼の苗字を告げると、誰からこの番号を聞いたかと聞かれた。
彼はここにいるようだ、今日は裁判所に行っている、と言われた。

留置場にいる被疑者に面会するには。
当日8時半すぎに警察署の留置管理課に電話をかけるとその日の状況を教えてもらえて面会可能か不可か分かる。
翌日(逮捕から4日目)再び警察署へ電話をすると9時半の面会受付開始と同時に面会ができるというので急いで警察署へ行った。
このところ急激に気温が下がって都内でも雪が降った。
凍えるように寒かった。

留置場は警察署の3階にあった。
身分証を見せてスマートフォンを鍵のかかるBOXに預けると面会室に通された。
面会室は2.5畳くらいの広さで丸い形にポツポつと穴が空いたアクリル板で仕切られていた。面会者側にパイプいすが3つ、そちら側にはパイプいすが2つあった。
少し前に、大阪の富田林署から逃走した人がいたけど、こんなところから勝手に出られると思えなかった。

面会には警察官が同席する。
開始直前、ずっと黙って立っていた年配の警察官が急に「昨日ね、暴れて頭打ったの。救急搬送されて頭縫ってネットしてるから」と言った。
びっくりした。

面会は警察官が分かる言葉=日本語で話すことが原則だが、私たちは日本語では話ができない。
ベテランの警察官に、私が聞きたいことは、取り調べに通訳はついているか、持病の薬は飲めているか、食事は大丈夫かの3つだと伝えた。
彼はあまり日本食が得意ではないので食事のことがとにかく気がかりだった。

通訳はついているよ、とベテラン警察官。
私物の薬を持ち込んで飲むことはできなくて医師が必要であれば処方するとのこと。
食事はごはん以外にパンも選べるとのこと。
(留置場の食事については後日いろいろ聞いた)
私の英語は流暢ではないが会話の内容を伝えると言い、警察官は「よし、それで行こう!」と言った。

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彼は頭にネットをしていて、目が真っ赤だった。
灰色のスエットを着ていた。
落ち着かない様子でなかなか言葉が出ない。
彼が英語で字を書いた。ほとんど読めなかったが、”Am I a prisoner?(刑務所に入れられたのか)”だけ読めた。
”No.”

警察官が「今は真実を言うべきときで暴れるときではない。怪我をすると取り調べができないので勾留が長引くことになる」と言ったが、私も正確な翻訳などできずうまく伝えられなかった。
警察官が彼の手を握って背中をさすった。
あわあわしているうちに15分がすぎた。

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