逮捕から53日。
《公判当日》
霞ヶ関駅から地上へ上がると、「裁判官、あなたの目は節穴ですか」などと言う手書きの文言が見えた。
大きな段ボール紙に大きな字で書かれたそれは裁判所の柵に丁寧に結わえてあった。
あんまり見ないようにした。
セキュリティーゲートを通って荷物検査してもらい、ロビーへ入った。
ロビーは天井が高く、薄暗かった。
すぐに開廷表を見た。タブレットで「今日の刑事事件」をチェックすると数が多すぎた。「14:00~16:00」を追加すると彼の名前があった。やっぱりあるんだと思った。
第710号法廷刑事第4部新件○○○○裁判長平成31年刑(わ)第○○○号
メモをして一旦外に出た。時間がありあまっているから日比谷公園をブラブラした。
数日前に桜の開花宣言がされたから、お弁当をつつきながらお花見をしている人がいっぱいいた。
12月にここにクリスマスマーケットに来たときは夜で寒かった。
日比谷公園はそのときと全然違っていた。
皇居外苑までも歩き回り、1時間も前から裁判所のロビーに座っていた。
いろんな人がひっきりなしに出入りする。
弁護士はセキュリティーチェックなしらしい。
開廷10分前。7階の710号法廷前には私以外誰もいない。
罪状と被告人の名の書かれた紙が1枚張ってあった。
ドアについている小さい小窓を開けてみたけど何も見えなかった。
紫色のふろしきを持ったスーツ姿の男性が「検察官、弁護人用扉」から入って行った。
不安になって法廷のドアの前で待っていると、年齢も性別もさまざまな人たちがどこからともなく集まってきた。
ガラスの扉から弁護人の○○さんが見えた。頬がほころんだ。
「もう判決の日程決まりましたよ」
6日後だった。私は急いでメモし、昨日東京拘置所で面会したと伝えた。
「彼どんな様子でした?」
「落ち着いてました」
○○さんは悠長に構えているがけっこうせっかちで「まだ前のやってるんじゃない」などと言い、ドアを開けようとするなどしていた。
開廷中のランプがポンとついて、男の人(後で書記官と知る)がひょっこり顔を出した。
さあ、裁判が始まる。
《公判を終えて》
裁判は悪い雰囲気ではなかった。
もちろん、犯罪の内容は盗みをはたらき、役に立ちそうなものを抜き、それ以外を他の場所に放置するという酷い内容だけど、検察官は仕事上怒っているふりをしているような気がした。
傍聴席に、ミスタートランスレート(弁護人と接見に訪れていた通訳士)がいて、会釈した。
裁判傍聴記(ただ、やりとりをほぼ全部記載したので長い)もお読みいただけるとうれしいです。
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