今公開している料理研究家辰巳芳子さんのドキュメンタリー「天のしずく」の予告を見て
図書館でこの方の本を借りてきた。
あなたのために―いのちを支えるスープ辰巳 芳子
すべてのスープ(洋風、和風、おみそ汁やポタージュ)は美しく系統化されている。
料理本らしくないこの本の四角くうつくしいグラデーションの表紙はスープの体系をあらわしている。
辰巳芳子さんは話しぶりも、本の文章もとてもほがらかで美しい書き方をする。
料理の手順に関してはとても厳しくやさしい。
愛する人においしいものを食べさせたい。あなたのためにそうしたい。私はいつもそう思っているけど。
料理はやっぱり愛情がなくてはね。愛情。
辰巳さんはお父様が嚥下障害になり毎日スープを作って食べさせ、そのスープから栄養を取らせた。
いのちを支えるスープということばはけっして大げさではないでしょ。
人間は(すべての動物は)食べることが生きること。
逆に言えば毎日口にする食べ物からしか栄養を取れない。だからこそ何を口にするかはとても大切でしょ。
私はすごく高カロリーなものを欲するときがある。
家に食べるものが何もなくて面倒で仕方がないがハラの減り具合に負けてコンビニで何か調達してくることも多い。
でもちゃんとした食事をしたいときは自分で作る。胃が自分の作ったものじゃないと満足しないの。
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1ページ目に出てくる玄米スープを作ってみた。
材料は炒った玄米、梅干し、昆布だけ。
辰巳芳子さんによると、あらゆる料理を食べてきた経験のある方にもあなたのあのスープがいちばんおいしかったと言ってもらえたり
もちろん病床のお父様に飲ませた、シンプルなスープ。
赤ちゃんからご老人、激務の人、いろんな方に勧められるスープだという。
この料理本の手順は五感を使って食材に意識を集中しないと作れないようになっている。
玄米を炒るとき「きつね色はやりすぎ、小麦色で」と書いてある…小麦色がどんな色か分からない。「何分くらい炒る」と書いていないのだ。
「1、2粒ぱちぱち弾け始めたら火を止める」そのニュアンスを感じ自分で信じてそのようにする。
できた玄米スープはほっこりした味がした。
人生の最期にこんなスープを口にしながら死んでいきたい。
他にも鶏のコンソメスープや野菜のポタージュの作り方も知ったので今度挑戦してみる。