打ち捨てられた車、陥没した道路、空き家。
見たことのないほど巨木に育ったプラタナス。
のら犬が車道でクラクションを鳴らされている。
夏場日陰を作ってくれていたのであろう、ぶどうの木々も枯れ、落葉がいっそう物がなしさを感じさせる。
物価が安く、ビザなしで最長一年間も滞在できるジョージア。
確かに物価、とくに食料品、野菜、乳製品、ハム類、ワインは安い。交通費も安い。宿泊費も安い。
地下鉄は旧ソ連時代に建設されたようで深く、長く速いエスカレーターが印象的だ。
地下鉄の中でたまらない気分になるのは、物乞いの人が、大声で募金をつのること。
大声なのは、車体が線路をこする音で、キーキーキーと爆音が響くから。
演説の内容を聞いて小銭を取り出す人もいるがほとんどの人は無視する。
私も宙を眺めて知らん顔をする。
小さい女の子なんかは、ひとりひとりの目の前まで行って、募金箱を差し出す。立ち止まられた女性は、慌てて財布を出すなどしていた。
なんか、憂うつだなと思いながら、道を歩いていたら、警察官に声を掛けられた。
駅前で漢字を書いてあげていた日本人の若者二人組を見た以外、アジア人どころか旅人さえまったく見かけない。
アジア人は目立つのだ。
自分が目立つ、という経験を私はほとんどしたことがない。
警察官2人が、道端で私をつかまえ「パスポート見せてください」と言ったので
私、たぶん気が強いんでしょう、とっさに、「警察証を見せてください」と言ってしまった。
警察官の一人が顔写真の入った警察証を見せてくれ、彼らはたしかに本物の警察官のようだった。
誰が外国の街角で警察と話したい!?
私はすごくどきどきして、パスポートを見せた。
ところがどっこい、ページをいくらめくってもジョージアのスタンプがない。
空港の入管を通った直後にスタンプが押されたことは確認したので、ないわけはないのだけど、気が動転して、ジョージアのスタンプが出てこない。
警察官がもういいよ、っていう感じで”Ok.Good luck.”と言ったので、私はグマドロ(ありがとう)、と言ってその場を離れた。
あとでパスポートを見てみたら、ジョージアのスタンプはいちばん後ろにあった。
教訓。
もし、外国で旅行中警察官に声をかけられたら、警察証の提示を求め、本物の警察官か確認する。
ニセ警官、ニセモノの警察証の場合もあるでしょうから、十分に注意する。
そして、パスポートの提示を求められたら、すぐにスタンプの場所を出せるようにしておく。
以上です。