外国籍の彼氏が窃盗容疑で逮捕され判決が出るまでを綴っています。
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その日、彼は上海でロストバゲージして一週間不在だったバッグパックを空港まで取りに行き、夜になってホステルに帰宅した。
ラウンジで会うなり「怒らせないで」と言った。
私はムッとしてすぐ彼から離れ、シャワーを浴びに逃げた。
今夜はおみやげのHARIBOを持って彼行きつけの居酒屋に行く予定だ。
シャワーから出ると、「いない。どこ行った?」とメッセージが入っていた。
彼の姿はなかった。
本当に行くのだろうか。
私は夕飯を食べ損ねてコーンスープを飲んでいた。
食べ終えた頃ホステルの支配人が私のところに来て、「お話があります」と言った。
支配人は警察からの電話を受けていて、彼がいま警察署にいて身元引受人に私を指定している、迎えに来れるか、という内容だった。
びっくりした。
夜21時は過ぎていたと思う。
刑事が2人、車で私を迎えに来た。
暗くてよく見えなかったが、顔半分マスクでがたいのいい刑事は咳をしていた。
車の中でたわいもない話をした。緊張した。
彼は窃盗をはたらいたとのことだった。
警察署の2階の廊下のいすで、盗課の女性刑事と軽く話した。その後サインをしたり写真を撮られたりした。
A4サイズの紙に、また警察から要請があったときには出頭します、という内容が彼の字で英語で書かれ、彼のファーストネームの印鑑が逆さまに押されていた。
先日印鑑を作ったと見せてくれたとき、普通印鑑は苗字で作るもんだよ、と言ったらがっかりしていた。
刑事が、電話でドイツ語の通訳士を通じて彼に話をした。
女の人の声で少し堅苦しいようなドイツ語が聴こえてきた。彼はうなづいた。
今日のところは帰ることになって、また車で送ってもらった。
その後居酒屋に出かけるのに、彼がスーツを着た。
タイトだね、と言うと、そうでなきゃね、と彼。手にはカラフルなHARIBO。
ビールと小さいつまみと手羽先を頼んだ。
店長が「なんだか疲れてるね。でもやっぱりかっこいいわ」と言った。
店長とスタッフの女の子が本場のHARIBOは変な味するね、と言い合っていた。